2010,年、NHKラジオ第二放送で坪内稔典さんの「時代を生きる子規」を聴き、自分にも作れるかなと思い、作り始めて今に至っております。
自分で気に入っている句を以下に挙げてみました。
田に注ぐ水音清し苗の丈
満開を誇ることもなき桜かな
旅立てり人へ手向けのこぶしかな
残り柿無き枝枝の寒さかな
刈り入れの済みし田圃や人心地
掌に余れる梨の重さかな
凩や遥かに箱根の際さやか
野分前宙に動ぜぬ女郎蜘蛛
お供えの誇らしげなり梨一つ
贈られし梨は強者揃いなり
贈られしゼリーの色の楽しさや
ナナカマド雪を冠りて待つ春や
ローカル線小春日和や山遥か
くにたみを養い給う稲穂かな
銀杏を拾う嫗の背の丸さ
カマキリの緑や朝の目にさやか
新世界蝉も加わる四楽章
青き空蝉の躯を通り過ぎ
全天の星が見守るお正月
ジョッキーに生けし菜の花も夢を追い
鯵買いて三日月かかる家路かな
雪残る山並遥か鄙の駅
野辺に来てそっと土筆も花見かな
牡蠣ひびの朽ちたる彼方秋の空
懐かしきことの積りし我が秋ぞ
散り逝くも水面に遊ぶ桜かな
偉そうな柿の実の下通り往き
鉢植えのハイビスカスや夕涼み
帰り道眼鏡に羽虫の一休み
朝焼けの火の見を見るは屋根の霜
山吹や咲きし実家も今は無し
鶯の初音や遠き朧雲
春暁の軌道進むや前照灯
春暁のレールの音や漫ろ神
今ここはうつし世なりか花がすみ
冬の蚊を叩いて済まぬ厠かな
積み藁のひなたぼっこが続く道
寄り添いて雨に濡つや畦の菊
木鼠も揺かごも無し枇杷の枝
蝉の声蕎麦喰う膳に我独り
人の世に和み老木の冬支度
梅雨の宵光を乗せていく電車
田植え済みただ青き空白き雲
残り柿残して山に日は落ちぬ
積み藁も皆それぞれの寒さかな
春なれど未だ漕ぎ手無き小舟かな
ゴミを出し雨だれ落つるうなじかな
けわいして初夏の店先パンの艶